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身体の内部を評価する「毛細血管」に注目

最近、テレビや雑誌などで取り上げられている「ゴースト血管」は、全身に張り巡らされている毛細血管に血流が行き渡らなくなり、消えてしまう状態のことを言います。接骨院では、このゴースト血管について、新しい分野のチェック方法としてカウンセリング等に取り入れる施術所が増えてきています。(公開:2020年5月1日、更新:2023年1月11日)

「毛細血管」が、老化や病気を食い止める要として注目

2023年1月11日、NHK “あさイチ“で「さらば冬バテ、血流アップ大作戦」という特集が放送されました。毛細血管の血流をアップさせ、冬に起こる体調不良「冬バテ」の緩和を目指す、という内容でした。

「血管」と聞くと動脈・静脈を思い出しがちですが、身体中の全血管の95%以上を占めるのは、実は毛細血管なのです。毛細血管は、直径約100分の1ミリの超極細血管で、赤血球が一列になってやっと通れるほどです。毛細血管は、身体中に張り巡らされているため、全部つなぎ合わせると約10万キロにもなります。毛細血管は動脈と静脈をつなぎ、全身に網目状で存在しています。

身体を構成する37兆個を超える細胞は、毛細血管から栄養と酸素を受け取り、不要な老廃物や二酸化炭素を回収します。そのため、この毛細血管が減ると栄養と酸素が細胞の隅々まで行き渡らず老廃物も排出できなくなり、細胞の老化が進んでしまいます。最新の研究では、加齢疾患、骨粗鬆症や認知症などにも毛細血管の血流不足が関わっていることが分かってきました。

≪毛細血管はこんな風に流れている!≫

なぜ「ゴースト血管」になる?

では、なぜ毛細血管が「ゴースト化」してしまうのでしょうか。簡単にご説明したいと思います。

毛細血管壁を構成している細胞同士の間には隙間や孔が存在します。その隙間から栄養分や酸素が適度に浸透することで細胞に必要な物質が届けられます。ところが、加齢や紫外線、活性酸素などによって毛細血管壁が傷ついてしまうと隙間や孔が広がり、過度に栄養分・老廃物等が漏れ出てしまうことで末端まで届かなくなります。その状態が続くと、血管がさらに細く狭くなり、やがて血流が途絶え、管はあるのに血液の流れない「ゴースト血管」となるのです。

あなたは、患者さまは大丈夫?血管の老化チェック表

・血糖値やコレステロール値が高い
・睡眠時間が短い/肌がよく乾燥する
・シミやシワが増えた
・揚げ物・インスタント食品をよく食べる
・お酒をよく飲む
・タバコを吸っている
・イライラすることが多い
・足がよくむくむ
・運動をほとんどしない
・頭痛や肩こり、腰痛を慢性的に患っている
・何となくやる気が出ない
・就寝中に何度も起きてしまう
・手足・足先が冷えやすい
・耳鳴りがするようになった


※当てはまる項目が多いほど、ゴースト血管、またはゴースト血管になる可能性が高いと言われています。

ゴースト血管は何歳からでも復活できる

加齢などで毛細血管が減少することは致し方ありませんが、その減少数を減らし、日常生活によって劣化したゴースト血管を復活させる方法があります。

それは、質の良い血液をゴースト血管内に届けることです。そうすることで、何歳からでも毛細血管を増やすことができるのです。全身に栄養と酸素が行き届くことで、毛細血管が徐々に復活し過剰な漏れが抑制されます。血管壁の修復も促され、血管が強くなっていきます。

そして、質の良い血液を流すためには、日常生活を見直すことが一番効果的だと言われています。

患者さまの中に、こんな方はいませんか?

ゴースト血管になっても直接痛みを感じることはありません。しかし、ゴースト血管が進行すると、身体の不調を招く原因の1つになります。筋肉や靭帯への血流不足は、肩こりや腰痛などに繋がると言われています。

施術を行うことで、ある程度患者さまの血行が良くなったとしても、ずっと持続するわけではありません。いくら接骨院で施術を行っても、患者さまが不摂生な生活を送っているのであれば、施術効果が長続きせず、不調を取り除くことは難しくなっていくでしょう。


<こんな患者さまはいませんか?>
・姿勢はバッチリ。でもどこか調子が悪い
・慢性的な症状で何度も来院される
・痛みとまではいかなくても、身体のだるさや重さを感じている
・生活習慣が不規則
・冷え性、不眠、疲れやすい、月経不順、むくみ等の症状で悩まれている

血流や血管の形でわかる生活習慣

「ゴースト血管」が話題となり、自分は大丈夫だろうかと不安になった方々が「毛細血管の状態をチェックできる場所はどこか」と、メーカーに問い合わせが殺到したと、ニュースでも取り上げられたことがありました。

すでに、医療機関・美容業界でも毛細血管のチェックを行うサービスが広がっており、接骨院業界でも「患者さまの身体の状態を把握できるもの」として、血流の経過チェックサービスを取り入れている施術所が増えています。

患者さまの身体の状態が改善に向かっているか、生活指導を実践してくれているかが、血流チェックを行うことで把握できるようになります。

施術者は患者さまに生活指導を行い、一日でも早く不調を取り除こうと日々尽力されていると思います。しかし、例えば週に1回1時間の施術を行って身体の調子を整えても、残りの167時間が不摂生な生活だとすれば、ゴースト血管が進行してしまい、せっかくの施術効果を発揮できない可能性があるのです。

血流観測を施術に取り入れている施術者に話を聞きました。

①『施術の提案に使っています。』
施術を提案する際に、実際に血流を見てもらっています。血流から患者さまの生活習慣や体質がある程度分かりますので、お伝えすると「当たっている!」と驚かれる方もいます。可視化することで自分事として捉えてもらえますし、患者さまから生活習慣について話してくれるようになり、施術提案や生活指導がしやすくなります。


②『訪問施術にも持っていけます。』
鍼灸の訪問施術に持参しています。施術の前後で血流の違いを見てもらうことで、施術効果を実感していただけます。患者さまのご家族やヘルパーさんにも観測してもらうことで、信頼を得ることができます。


③『話題性があるので興味を持つ方が多いですね。』
「ゴースト血管」という言葉はよく知られているようで、「やってみたい!」と言ってくださる患者さまが多いです。コミュニケーションを取るきっかけにもなりますし、生活指導の話を聞いてもらいやすくなったと感じます。

なんとなく実施は逆効果?血流チェックを実施する接骨院での注意点

すでに患者さまと強い信頼関係ができているなら、施術者も血流チェックを提案しやすく、患者さまも疑問をいろいろ施術者に聞きやすいのですが、来院してまだ日の浅い患者さまの場合は、そうはいきません。

接骨院に慣れていない、施術者と信頼関係が弱い患者さまの場合、自分の身体の状態、特に「悪い状態」を周りに知られることを恥ずかしく思ってしまうことがあります。

例えば、「ご自由にお使いください」と待合室に血流チェックの機器が置いてあっても、恥ずかしくて使うことはできません。
他の患者さまに聞こえるような場所、声量でヒアリングされると、聞かれるのが嫌なので曖昧な表現で濁してしまいます。
「血流チェックをしてみませんか?」と提案するだけでは、今以上の不調を見られたくないので断ります。

もちろん、患者さまは施術者が嫌いといわけでも、施術や血流チェックに興味が無いわけでもないでしょう。このような患者さまの「恥ずかしさ」の根底には「どうして自分だけ・・・周りの人にはこんな不調無いのに・・・」という思いがあるのです。患者さまの不調に適した施術を提供するためにも、施術者が患者さまの身体の状態を知っておくことはとても重要です。施術者として上記のような患者さまの思いを汲み取り、ちょっとした気配りを行いましょう。そうすることで、患者さまが自分の状態に向き合えるようになり、施術者が身体の状態を把握することができます。

ヒアリングや血流チェックは、院長室、あるいはカーテンで仕切ったベットサイドで行い、声量も少しだけ落とし、患者さまだけに話しかけるように行いましょう。
その最中、「最近は同じお悩みの方が多いんですよ」等のお声かけを入れることで、「自分だけ悩んでいるのではない」「この先生は私と同じ不調の患者さんの対応をしたことがあるのかな」と、少しずつご自身のことについて教えてくれるようになるでしょう。

また、血流チェックもカウンセリングや検査の一連の流れに組み込むこともお勧めです。「なぜ不調が出ているのか」「身体の不調が血流にどう表れているのか」等、施術者の説明と検査が組み合わさって初めて、患者さまの中で自身の不調と血流の状態の因果関係が結びつき、施術を受ける決め手になるのです。

効果を伝えにくい施術も「見える化」できる

身体の変化を実感しにくい場合、「この施術は意味があるのかな」と不安に思われる患者さまもいらっしゃると思います。

血流や血管の形を可視化することで、施術者と患者さまの共通認識を持つことができます。施術の前後に観測することで、身体の中にしっかりと変化が起こっていることが患者さまに伝わりやすくなります。

身体の歪みを調整しても不調が残る場合には、施術の方向性を再確認するきっかけにもなるでしょう。

施術者として、患者さまを健康に導く存在に

実際に体内を流れる毛細血管をチェックすることで、患者さまは生活習慣の見直しに興味を持つようになるでしょう。しかし、生活習慣の見直しと一口に言っても、忙しい毎日を送っている方々にとっては難しいことかもしれません。

まずは、患者さまに自身の身体に興味を持ってもらうことから始めてみましょう。専門的な話ではなく、ちょっとした意識づけや見直しを行うだけで良い方向へ進むことを、患者さまに実感していただくことが大切です。

患者さまを健康に導く存在として生活習慣をチェックし、施術・アドバイスをすることで、健康状態が良い方向に向かっていけば、信頼の獲得にもつながります。接骨院に勤務する施術者だからこそ、患者さまの健康のためにさまざまな提案・アドバイスができると思います。

あなたなら、患者さまにどんな提案をされますか?



≪参考文献≫
根来秀行『「毛細血管」は増やすが勝ち!』集英社:2016
高倉伸幸『ゴースト血管をつくらない33のメソッド』毎日新聞出版:2019

アトリク(柔整・あはき専用求人サイト)

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