石灰沈着性腱炎をおこす原因は石灰化にあった
カルシウムが不足すると、骨からカルシウムが溶け出し、細胞や血管、骨に沈着し、石灰化すれば動脈硬化や生活習慣病を引き起こすことも。このような現象は「カルシウム・パラドックス」と呼ばれています。
カルシウム不足=骨が弱くなる、は真理
ヒトの骨は、一度作られたらずっと同じというわけではありません。常に古くなった骨を壊して吸収し(骨吸収)、その場に新しく骨を作る(骨形成)という作業を繰り返します。そして、血液中のカルシウムの値を調節すると共に、骨の強度を保っています。これを「骨代謝」と呼び、骨吸収は破骨細胞が、骨形成は骨芽細胞がそれぞれ担っています。健常の人の骨代謝は骨吸収と骨形成のバランスが保たれ、身長の伸びと共に骨量は増加し、20歳前後から初老期まで維持されます。
カルシウムは人体内に含まれるミネラルであり、とても重要な成分です。99%のカルシウムは骨や歯を形成するのですが、血液中に存在する1%のカルシウムは、心臓や脳、筋を動かすという大変重要な役割を担っています。人間の体を構成する60兆個の細胞はカルシウムの出す情報によって各々の役割を果たしており、カルシウムが無いと活動を維持することができません。この血液中のカルシウム量が不足すると、体は心臓の動きを守ることを第一に考え、自身の骨に貯蔵されているカルシウムを溶かして補おうとする働きが起こります。
「カルシウムが不足すると、骨が弱くなる」と言われているのは、「血液中のカルシウムを補うために骨からカルシウムが溶け出しているから」ということになります。むやみにカルシウムを口から取り入れるのではなく、“血液中のカルシウム量を保つこと”が重要です。
なぜ“パラドックス”なのか
血液中のカルシウム量のバランスが崩れると、関節の炎症を引き起こすだけではなく、他の臓器の細胞に有害になることがあります。すい臓においてカルシウムは、インスリン分泌を促す役割を担います。カルシウムの働きが低下もしくは阻害されると、インスリンの分泌量が低下し「糖尿病」を引き起こす可能性があります。血管壁に付着して石灰化すると「動脈硬化」や「高血圧」を引き起こし、脳の伝達経路が破壊され「認知症」になることもあります。
このように、カルシウム量のバランスが崩れることで様々な器官に影響を及ぼし、多くの生活習慣病を引き起こす原因になりかねません。それでも血液中のカルシウム量が低くなれば、心臓を守るために体は血液中にカルシウムを溶かし続けます。その結果、血液中や軟部のカルシウム量が増え、動脈硬化などの様々な疾病が起こり、骨自体はもろくなる―これがいわゆる「カルシウム・パラドックス」と言われる現象です。
特に思い当たる節がない、急激な痛みを伴う関節痛の原因として、血液中のカルシウムが身体の各関節に沈着し炎症を起こす「石灰沈着性腱炎(ハイドロキシアパタイト)」による痛みも多くあるようです。いわゆる「四十肩」「五十肩」と呼ばれている症状の代表的な発生部位は肩関節ですが、実は同様の症状が股関節、次いで、膝や肘、足や手指にも発生します。手関節や手指に起こった場合、多くは使い過ぎによる痛みとして扱ってしまいがちですが、特にケガをした覚えがないのに急に痛み出したり、腫れたりした場合には石灰沈着性腱炎を疑ってみた方が良いでしょう。
この石灰沈着性腱炎の痛みを引き起こす燐酸カルシウムの石灰化は、現在のところ明確な原因が証明されていません。ただ、元来カルシウム不足である日本人に多く、その中でも女性、特に閉経後に多く発生することから、骨代謝のバランスや女性ホルモンが関係しているのではないかと考えられています。整形外科では治療薬としてカルシウムを処方しているところもあるようです。
血液中に存在する1%のカルシウムが関節に沈着して、何かしらの刺激によって骨液胞内に流入した場合、体が異物と判断して攻撃するため、炎症となり激痛が起こります。石灰沈着性腱炎においては、ホルモン、カルシウムの代謝や骨粗しょう症にもアプローチしていく必要もあるのではないでしょうか。こういった症状は、いろいろな手技を加えてみてもなかなか良くなることはなく、まずは安静にすることが一番です。また、熱感、腫れを伴う場合は、十分にアイシングをすることが大切です。
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