重力と筋骨量から見る施術法
宇宙に長期滞在した宇宙飛行士は、帰還後数週間のリハビリを行います。宇宙空間=無重力状態の空間では、重力が身体にかからないため、身体を支える筋肉や骨が使われなくなり、衰えてしまうからです。この現象は、年齢と共に運動能力が低下したり、骨に負荷がかからず脆くなったりしていく状態にどこか似ています。(公開:2014年12月26日、更新:2023年1月25日)
目次
無重力は加齢現象を引き起こす?
私たちは、日常生活の中で無意識に立ったり座ったり、今の姿勢を維持していますが、実際は常に重力の影響を受けています。その重力に負けずに身体を自由に動かすため、抗重力筋が常に働いています。しかし、宇宙空間のように重力の負荷がかからない状態は、抗重力筋などの筋骨量を維持する必要が無くなるため、筋力低下だけでなく骨粗鬆症に似た現象も起きてくると言われています。
実際、国際宇宙ステーションに滞在中の宇宙飛行士は、毎日2時間程度のトレーニングを行っていますが、残りの22時間は無重力の状態で過ごすことになるため、骨粗鬆症患者の約10倍の速さで骨密度が減少すると言います。
“帰還した宇宙飛行士”と“寝たきりの方”の共通点
無重力状態での骨筋量の低下、これによく似た現象が「廃用症候群」です。長期間、身体を安静にしていることで身体の身体機能が衰え、筋肉や関節だけでなく、身体にさまざまな悪影響を生じさせることを言います。特に、高齢者は、気づかないうちに起きられない・歩けないなどの状態になっている場合があり、ひどい場合「寝たきり」状態になってしまうこともあります。
実際、NASAの研究で宇宙に長く滞在する宇宙飛行士の体が受ける無重力の影響を再現する目的で、被験者に90日間「寝たきり」でいてもらうという実験(ベッドレスト研究)も行われています。運動による刺激を与えないということは、疑似的に無重力化における状態に近づいていっていることなのでしょう。
現代社会では筋肉を使う機会が減っている
骨量のピークはおよそ20~30代だと言われています。また、骨や筋肉は、適度な運動や刺激を与え、栄養をバランスよく摂取することで維持されていくものです。しかし、現代社会は便利になり過ぎて運動する機会が減少し、運動器が早くから弱ってきてしまい、まるで宇宙飛行士と同じような状況の方が増えてきているように感じます。
重力に抵抗すべき骨量、筋力が低下してしまっている場合、サポートを受けながらでも自身の筋力を以って重力に抵抗し続けていくことが健康寿命を維持するためには重要でしょう。平均寿命が延びていく一方で、健康寿命が維持できていないばかりではなく、早期より状況が悪くなっている方も多くなってきているように思われます。
寝たきりにさせないために①適度なトレーニング
身体が動きづらくなったとしても、寝たきりにさせてはいけないという考えは、おそらく柔道整復師・鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師の方であれば納得なのではないでしょうか。負荷のかかっていない所への積極的アプローチ、また負荷のかかりすぎている所へ負荷軽減を部分的に行うことが必要となってきます。カウンターストレインや吊り下げ機器、さらしや包帯、サポーターを使った関節、局所の負荷軽減などがおすすめです。
また、EMSなどのトレーニングマシンを活用し、インナーマッスルを鍛えるのも良いでしょう。インナーマッスルは、背骨を支え姿勢を維持させ、身体の軸を安定させてくれる筋肉です。特に、腸腰筋はインナーマッスルでもあり抗重力筋であるので、身体の中でも重要な筋肉と言えます。
複合高周波EMSを使用すれば、インナーマッスルとアウターマッスル両方にアプローチできます。
・複合高周波「楽トレ」でアプローチできる主な筋肉(インナーマッスル)の部位
腸腰筋/腹直筋/腹斜筋/腹横筋/腰方形筋/脊椎起立筋/大殿筋/菱形筋/肩甲骨筋/大胸筋/骨盤底筋群/大腿四頭筋/棘下筋/中臀筋 など
寝たきりにさせないために②食生活の見直し
加えて、当然ながら食生活についても気にしていかなければなりません。骨の元になるカルシウムはもちろんの事、吸収を促すビタミンDの摂取や、ビタミンを合成するために日光を適度に浴びることが必要です。また、加工食品にはリンが多く含まれているものもあり、過剰に摂取するとカルシウムの吸収を妨げますし、塩分やカフェインにはカルシウムの尿への排出を促す作用がありますので、加工食品やコーヒーなどの摂りすぎに注意していく必要があるでしょう。
地域の健康を支える人間として、患者さまが人生の最後の日まで、自分の足で歩き続けていただけるようにサポートしていきたいものです。
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