介護業界の今
超高齢化社会のピークが2025年に迫っている。 拡大するマーケット―― 拡がるニーズ。柔道整復師として何ができるのか?
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接骨院、そして介護事業参入のきっかけ
株式会社ATECC
代表取締役社長
山下 大貴
柔道整復師として院長経験を経て接骨院事業と介護事業の2つを柱として展開する(株)ATECC代表取締役に就任し、常に先の未来を見据えながら資格者としての経験と知識を活かして、接骨院19院、介護事業所10施設まで拡大させる。本年度もデイサービスの新開設を控え、国内ニーズの拡大に備えて着々とシェアを広げている。介護事業での従業員数も100名を超える中、柔道整復師をデイサービス責任者・機能訓練指導員として雇用し、その活躍の場を広げる活動も行う。
◆接骨院をはじめたきっかけは?
小学校から大学までずっと部活をやっていて、いざ進路を決めるとなったときに何か手に職をつけようと思いました。柔道整復師や鍼灸師、一級建築士といった資格を考えていたときに、建具屋をしていた父親から不動産業より高齢者向けの仕事が今後は活かされるという言葉をもらって。自分自身もずっと部活で接骨院に通っていたということもあって、柔道整復師を選択しました。
とはいってもずっと部活だけをしていたから実は勉強というのをしたことがなくてね。僕と同じような環境だった先生も多いんじゃないですかね。そういう状態で接骨院でアルバイトをしながら柔道整復師の試験勉強をしました。
◆開業したときは順調だったんですか?
全く順調じゃなかったですよ。免許を取った年の9月に院長として立たせてもらったんですけど、プレオープンすらなくて開業の折り込みチラシを入れて、来院するのを待ってるだけ。初日は8人でしたね。2?3ヶ月はそれが続きました。
それでもだんだんと広がって患者数が増えて忙しくなってきたと思ったら、今度は受付以外が全員辞めてしまいました。当時は、自分自身がそう育ってきたというのもあって、「スタッフなんて死ぬほど働いてなんぼや」くらいの接し方をしてたんです。でも、辞められてからようやく自分がスタッフとして働いていたときは、実は当時の院長がちゃんと気を遣ってくれていたんだというのに気づいたんですね。まあ、そんな経緯でスタッフが辞めちゃったんで、施術者は自分しかいないわけですから、1人で1日40人くらいみてましたね。
今はそういう経験を経て、もちろん厳しいことも言うけど、ちゃんとフォローするようにしています。スタッフたちと将来像を話す機会を設けたりしてね。やる気を持って働いてくれていると感じます。
◆介護業界への参入は何をきっかけに?
もともとは接骨院を個人経営でやっていて、50院くらいまで拡大したいという想いがありました。トップになって、組織として経営を行いたいっていうね。そういう想いを持ちながら接骨院を経営してきて(株)ATECCでのお話をいただいて、平成21年に代取締役に就任しました。
もともと介護事業も手掛けていた会社だったので、そのまま引き継ぐ形でしたが、柔道整復師を目指したのも介護マーケットの拡大が確実だと思ったからだし、素晴らしいチャンスだと思いましたね。そこから展開を続けて、今はデイサービスや訪問介護を含めて10施設まで展開することができました。2017年3月には接骨院併設型の介護を開所予定です。
◆接骨院事業との違いは?
まず、働いている方の層が全然違いますね。従業員に対しての研修内容とか教育内容も全然違います。これから介護事業への参入を考えている経営者であれば、多くはおそらく自分の方が年下で男性という立場から30~50代の女性を雇用する側になります。今までは先生として施術している側だった方々ですよね。
僕の場合はFC参入だったので研修制度こそ充実してましたけど、全く違うと思って、接骨院と同じ感覚でされない方が良いです。スタッフもそうですけど、顧客にあたる患者と利用者に対しても立場も変わります。接骨院では先生として「アドバイス・指導する側」だった。でも、介護現場では全て「聞く側」になります。
それに、訪問介護などはそもそも人材がころころ変わる事業です。ヘルパーは登録制なので、〝かけもち?している状態ですから。保険の制度だって全然違いますし。このあたりの事情とか制度とか、そういうものを先に知っておいたら、かなり楽だったろうと思いますよ。
柔道整復師の活躍と介護産業、接骨院業界の未来
◆柔道整復師として介護現場ではどのような活躍を期待されますか?
これから事業参入を考えられている方にとっては、もともとの接骨院から患者が移ってくれるので最大限に活かせますね。予防という観点で言えば柔道整復師は強い分野だと思いますし、介護事業とは非常に相性が良いです。柔道整復師として接骨院で働いていた経験自体が非常に強みとなります。
実は今、接骨院で働く柔道整復師が面接に来られるのが増えてるんですよ。接骨院の院長からデイサービスに就職ということもありました。正直なところ、接骨院も経営している僕から見ると非常にもったいないなぁと思うのですけど、将来への不安と安定感を求めてのことのようですね。拘束時間の長い接骨院とは違って、就業時間が比較的安定してるのはデイサービスになります。
介護現場での問題で多いのが、ヘルパーさんとトラブルに・・・ってことです。ヘルパーさんが柔道整復師と合わないっていう問題は割と多いです。柔道整復師は先生として働いた経験しかない方が多いので、そういう職場での気遣いの方法とかに触れ合ってきてないんですよ。僕の場合は、FC本部の方が間に入ってうまくとりなしてくれるので、自分自身が間に入って板挟みに・・・ということはないのですけど、これから参入される方や就職を考えてる方にとっては最初にあたる壁かもしれないですね。雇用する側として言えば、柔道整復師の良さは僕自身知ってるので技術的な問題は心配してなくて、うまくコミュニケーションを取ってくれる子が来てほしいかなって思います。
◆介護産業、接骨院業界の未来は?
接骨院業界では今後もどんどん制度が整っていきますから、〝部位ころがし?を未だにやってるようなところ、制度や時代に添って事業展開していないところ、そしていわゆる保険依存型のところはもう先がないのは目に見えています。
社会が、業界が進化してきてる。新しいパターンを受け入れて繁盛するところは繁盛するでしょう。行政がそのような動きをしてくれてること自体は、業界にとって明るい。もちろん保険料の売上が下がるというのはあるけど、業界自体は確実に伸びる。ちゃんとした形で売上を立てることができる形になっていくはず。
自分は接骨院をやってから介護事業を始めたけど、それは接骨院業界が悪くなってきてるとかではなくて、経営手段として新たなキャッシュポイントを作ることが目的。両事業がリンクできる――〝はねる?と思った。
特に介護は、2025年に20兆円のマーケットが見えてる=それだけの利用者が来ることがわかっていて、しかも接骨院とこんなに相性がいいのに、何故逃す必要があるのかって思う。自分が介護事業をはじめたころはなかったものです。
事業計画さえあれば借り入れも可能だし、接骨院を経営していればそこそこ自己資金も用意できるんじゃないかな。今は整っていない規則も、その頃(2025年)になればきっちり決まってくるはず。そうやって制度が確立されてきたころに、医師やPT、OTと柔道整復師との協力体制ができるといったさまざまなパターンが増えるはずです。機能訓練型も進化して増えていくし、現に今、増えてきている。
こうしてどんどん進化していく会社とだめになっていく会社が行政の指導によって2局化していきます。どう変化とうまくリンクさせるかというのが、今後作り上げていかないといけないところ。柔道整復師・鍼灸師が働けるパターンがもっと出てくると思います。
◆柔道整復師の先生方へお伝えしたいことは?
介護参入・就職、接骨院での体質改善など柔道整復師としてさまざまな未来があって、これからその未来に向かって現状からの変化を望まれる方がきっとこの紙面を見ていると思います。
でも変化させるときに小さくちょっとだけって思ってたらだめだと僕は思っています。例えば保険依存型から実費施術型に変えたいと思ったら、今いる患者をどうにか残した形でやろうとしたらまず失敗します。180度変えるくらいじゃないと変化というのは起きません。
あと、そういう変化の見方ですね。売上や患者数の変化を見るのに、去年との比較をする方が多いです。実は3年前と比較するとだいぶ下がっているということに気づかない場合が多い。療養費の2年に1回の改定も1個前だけ見てちょっとだけ下がったなぁじゃなくて、もっと前から下がった分を見て、その分、別で売上を取れているか?そういうところを見て決断していかないとボディブローのように効いてくると思います。
今から入ってくる人たちは開業したいという想いの人だけではなくて、安定を望む方も多いです。でも、経営者として夢があるのは接骨院開業だったりする。今、この記事を読んでくださっている先生方が、来たる未来に備えて良い選択ができるよう応援しています。
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